チンパンジー言語訓練ブログ

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省力化を昇華させるアニメーション ~けものフレンズ、団地ともお、輪るピングドラムなどを例に挙げて~

昨今の人手不足や資金不足に苦しむアニメーション業界。資金を十分に得る事のできないアニメーションは当然、省力化を迫られることになる。省力化となればほとんどの場合、アニメーションのクオリティは落ちてしまう。作画崩壊、不自然な背景、ポリゴン臭さを隠せない3D映像などを目にする事は、(資金が不足しがちなマイナーなアニメーションを見る人には)おそらく多いのではないだろうか。

しかし、省力化によって出てしまう粗を逆にその作品独特の雰囲気として生かすアニメーションも多く表れているように思う。

その最たる例は「秘密結社鷹の爪」だろうか。フラッシュを用いたチープなアニメは、チープなギャグとの相性抜群である。同じくフラッシュアニメのチープさを雰囲気として生かしているアニメーションでは、トリガーの「ニンジャスレイヤー」などが思いつく。フラッシュのチープさを生かした作品は、鷹の爪の影響なのか、意外と多い。

雰囲気を作ろうとした結果、図らずも省力化できたのかもしれないと思うほど、省力化から雰囲気を生み出したアニメーションもある。「輪るピングドラム」だ(雰囲気作りか省力化、どちらが目的かは分からない)。この作品では、主要な登場人物以外の「モブキャラクター」を全て、ピクトグラムにしてしまったのだ。表情も無ければ、動きも一切無い、ただの人間マークである。それによって、物語の世界に主要な登場人物たちしか存在していないかのような、孤独な雰囲気(人込みの中の孤独と言えばいいだろうか)を醸し出す事ができている。加えて大幅な省力化を達成している。

団地ともお」は、ほぼフル3DCGアニメである。しかし、そのCGのクオリティは、お世辞にも高いとは言えない。初めて見れば絶対に違和感を覚えるものと思われる。2Ðにしかできないようなデザインのキャラクターを無理やり3Dにあてはめている感じや、リアルとファンタジーのちょうど中間をゆく絶妙な重量感が感じられる。動きもリアルなようであり、デフォルメなようでもあり、俗に言う「違和感マックス」だ。しかし、ストーリーやセリフ回し、カメラアングルや背景の使い方、音楽や効果音に至っても徹底されており、原作の漫画以上の非常に繊細でリアルな心理描写を行っている(もちろん声優の演技も超一級品だ)。数話見れば、違和感は消えさり、そのストーリーや演出に魅せられることになるだろう。その頃には、違和感を覚えさせていたモノは、ありきたりな日常を表現するする「素朴さ」を感じさせるモノになっているはずだ。何気ない日常の素朴さを表現するのは、徹底的なモーションの観察によるアニメーションでは難しい事がある。言い方が難しいのだが、「素朴な雰囲気をリアルに描写する」と、「リアリティのある素朴な雰囲気を作品に帯びさせる」は別の事のように感じる。

(落語家がそばを食べる動きを細かい観察によって上手に真似るというのをよく見るが、それが上手ければ上手いほど、「そばを食べている」から離れて、「そばを食べる素晴らしい演技をしている」に近づいているのと同じような感じであるのだが、共感できる人はいるのだろうか…自信が無い)

とにかく見ればわかるのだが、団地ともおは、省力化によって、決してチープさではなく、リアルな素朴さを得ることに成功している。

そして、最近話題なのが「けものフレンズ」だ。現在時点で未完結(11話)であるが、細かく作り込まれた構成や、微妙に怖さをも感じさせる演出、毒素が少なく誰もが嫌悪感を覚えずに楽しく見られるストーリーが評判である。しかし、アニメーションだけで言うと、このアニメ、とにかくチープである。この種のアニメは本来、「カワイイ」で押していくタイプのアニメなのだろうが、正直それでやっていくには厳しいレベルのチープさである。となれば話題にならず流れていくアニメの一つになるかと思いきや、この評判である。私の好きなアニメ団地ともおの関係者がストーリー構成を担当していると聞きつけ、話題のこのアニメを見てみたのだが、なるほど、おもしろい。頭を空っぽのままに楽しく見終われるアニメだと感じた。このアニメのいいところは、無駄なものが一切入っていない部分だと私は思う。とにかくシンプルで不純物が少ない。それでいて一話一話のストーリーにはしっかりと中身があって、物語が面白い。中盤からは加えて、謎を呼ぶ演出や、ほのかに感じさせていた退廃感を少しずつ強調していくことによって、ストーリーの全体像を緩やかに動かし始める…無駄が一切排除されている。

このアニメのチープなアニメーションは、シンプルでいてほのぼのとさせつつも、どこか骨太なストーリーと相性がいい。上質すぎるアニメーションは時折、ストーリーや演出への集中を邪魔することがあるのだが、このチープなアニメーションは、物語を見せるための手段の一つであることに徹し、物語の上に立って作品の主役をやろうとはしない。それによってストーリーが主役としてより際立っているのではないだろうか。

(半分映画のような、アニメーションのカットを大量に入れ込んだ最近のゲームのストーリーよりも、ドットの小さいキャラクターが文字でしゃべるだけの昔のゲームのストーリーの方が面白く感じるという経験はないだろうか)

以上に挙げたアニメのように、低予算という現実を前向きにとらえて昇華させていけるアニメが今後増えていく事を期待したい。そしてゆくゆくは、アニメーション制作が大衆にとってもっと身近なものに、誰もが容易に自分の考えた物語をアニメーションで表現できる未来が来ることを、私は期待する。

(このブログは私の言語訓練に用いられます)