チンパンジー言語訓練ブログ

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けものフレンズたつき監督の「考察マーケティング」の巧さ ~100人中1人に気付かれるコントロール~

(この記事は、私の過去の記事、「想像/創造の余地について① ~魔法少女まどかマギカはなぜあそこまで盛り上がったか?~」【http://liuwusi.hatenablog.com/entry/2017/03/29/055413 】と合わせて読んでいただければ内容がよく分かるかと思います。)

 

アニメが終了した現在でも、圧倒的人気を維持する「けものフレンズ」。その爆発の裏に隠されたマーケティング、いわゆる「ステマ」があったのではないかという声もちらほらと聞こえる。(私は評価サイトを買収でもしない限りは、ステマが悪いとは思わない)

しかしご存知の事情の通り、けものフレンズにそんなことをする予算など当然なかったはずであることから、誰かを買収してのマーケティングが行われたとは考えにくいし、そもそもこのアニメを大売出しして得られるリターンは少ない。

(余談だが、噂によるとグッズショップではほとんどの商品が売り切れ、売る事ができるのは「桶」ばかりだという。それはもうとんでもない金額の機会損失を作っているに違いない。)

ではどうしてけものフレンズはこんなにも流行ったのか。偶然の要素ももちろんあっただろう。しかしそこには、たつき監督の実に巧いマーケティングがあったという事が分かった。

 

以下は、週刊朝日の記事、『アニメ「けものフレンズ」の仕掛け人が語る大ヒットの秘訣』(2ページ)【https://dot.asahi.com/wa/2017040500085.html?page=2】からの引用である。

 

(以下引用)

 

――作品では「トキ」など絶滅危惧種の目に輝き(ハイライト)を入れず差別化するなど、細部までこだわりが感じられます。

 

 ぱっと見てもわからないでしょうが、キャラクターをまねて描こうとしたファンが気づいたのではないでしょうか。この子だけ目にハイライトがないと。これはたつき監督が言っていることですが、「100人に1人」ぐらいに気づかれるコントロールがちょうどいい。100人に1人が気づいてくれれば、ネットで残りの99人に知らせてくれるんです。「1000人に1人」だと最後まで気づかれないかもしれません。「2人に1人」だと自慢にならないでしょう。「100人に1人」を実現しているたつき監督の手法は、横から見ていて、今までの経験が物を言っていると思います。

 

(以上引用)

 

つまりたつき監督は、じっくり見て考察する視聴者のSNS発信力を活かしてマーケティングを行っていたのだ(SNSで話題になればリツイート等反響によって、多くの人が知る事になる)。これはある意味、「ステマ」と言えなくもないかもしれない。たつき監督は、熱心なアニメファンが、発信者として「タダ働き」するように上手く仕向けていたのである。

よく使われる「ステマ」の意味が、隠されたマーケティングのうち、お金が絡んだ物を指しているものだとすれば、ある意味(100人中99人が気づかないように)隠されていても、お金が絡んでいないこのたつき監督のマーケティングは、「ステマ」とは似て非なるものである。これを私は、「考察マーケティング」と呼ぼうと思う。

ちなみに、口コミを用いた低コストのマーケティングは、Word-of-mouth(口コミ) marketing(略してWOMM)と呼ばれ、さらにこのうち、SNSを利用したWOMMはバイラルマーケティング(Viral marketing)と呼ばれている。考察マーケティングは、バイラルマーケティングの一種と言えるだろう。

この考察マーケティングは、かなり前からアニメ業界で行われてきたものだ。その筆頭は「魔法少女まどかマギカ」である。魔法少女まどかマギカには、考察するための謎が存分に用意されていた。誰もがその謎解きに夢中になり、自分の考察をインターネット掲示板SNSで発表し(それにより話題になり)、絶大なマーケティング効果を得た。時期的に考えて、魔法少女まどかマギカは考察マーケティングを初めてツイッターという舞台で成功させたアニメではないかと私は思う。

魔法少女まどかマギカのヒットによって、SNSとの親和性が証明されてメジャーになった考察マーケティングだが、全てが上手くいったわけではなかった。世に「考察アニメ」というジャンルのアニメがあふれたが、ヒットしたものは多くない。私が好きなアニメ「輪るピングドラム」も考察アニメの一つだ。面白いアニメだったが大きくヒットはしなかった。

考察要素だけを作っていてもダメで、他の要素(そのうちの一つ、「想像/創造の余地」に私は過去言及している)+考察要素で無ければならないようである。もちろんそれ以前に、ストーリーが面白くなければならないのは言うまでもない。

(ウィキペディアのWOMMのページ【https://en.wikipedia.org/wiki/Word-of-mouth_marketing】には、WOMMを刺激する13の要素がまとめられている。参考にしていただきたい。「想像/創造の余地」は14個目の要素ではなかろうかと私はワクワクしている。)

たつき監督は、ほんわかとしつつも退廃感のある「ジャパリパーク」という舞台と、考察マーケティングの相性が抜群である事に気付いていたに違いない。そして、「100人に1人気づく」という絶妙なコントロールをやってのけた。これこそまさにヒットメーカーの仕事である。たつき氏は、素晴らしい監督であると同時に、素晴らしい嗅覚とセンスを持つマーケターでもあるのだ。

(この記事で用いられたWOMMやバイラルマーケティングなどの用語のソースはウィキペディアです。間違った情報である可能性もあるので注意してください。日本語のページと英語のページで内容が違った部分も多く、この記事では英語版を信用して話を進めています)

 (このブログは私の言語訓練に用いられます)