チンパンジー言語訓練ブログ

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けものフレンズの二次創作ガイドラインについて⑥ ~リミックスと同人はどう違う?~

(この記事は大きな記事の一部です。初めてこのシリーズをご覧になった方はこちらへ)

(けものフレンズの二次創作ガイドラインについて⑤ ~三つの比較まとめ~の続きです)

クリエイティブコモンズライセンスと、同人マークライセンス(加えてけものフレンズガイドライン)の決定的な違いは、「コピー」を認めるか認めないかという点である。このコピーに対する姿勢は、完全に両者真逆だ。

クリエイティブコモンズライセンスでは、二次利用の条件が四つの要素の組み合わせで柔軟に決められると説明したが、全ての組み合わせにおいて、完全なコピーが許されている。そして条件「改変禁止」が入っている場合、創作物の改変は許されず、同人マークとは真逆で完全なコピーしか許されない。

一方同人マークライセンスでは、「作品のコピーは認めず二次創作を黙認する、日本のいわゆる同人文化にマッチしていない」という理由で、コピーは許可されていない。

クリエイティブコモンズライセンス、同人マークライセンス共に、その目的は二次利用の促進なのだが、両者が想定する「二次利用」は大きく異なる。

クリエイティブコモンズライセンスの指す二次利用とは、再配布、公開実演(音楽や映像)、リミックス(「改変禁止」が組み込まれている場合は無理)を想定しているのに対し、同人マークライセンスの指す二次利用はその名の通り同人活動だ。

んん?待てよ、リミックスと同人活動は何が違うんだ?どちらも二次創作には変わりないじゃないか。と思う人もいるかもしれない。私もそう思う。

だが、リミックスと同人活動は似ているようで多分違うものだ。だからこそ同人マークが生まれた….のかもしれない。

では、どう違うのか。私なりの見解を述べたい。

 

「リミックス」とはおそらく、元となる創作の、何かしら具体的なデータを利用して、新たに二次創作を行うものではないだろうか。

具体的データとは、音楽であれば歌詞やボーカルの音声データ、漫画であればセリフや絵そのもの、そしてストーリーもデータにできると言っていいだろう。アニメであれば声や音楽のデータ、映像データ、背景、3Dアニメであれば動かしている3Dモデルがこれにあたると思う。

以上挙げたように、0と1に変換できる具体的な、人によって解釈の異なることがないデータを利用する二次創作をリミックスと呼ぶと私は考えている。(例えばニコニコ動画の「MAD」はリミックスだ。)

一方同人マークライセンスやけものフレンズの二次創作ガイドラインで想定している、「同人活動」なる二次創作は、0と1に変換しにくいデータ、それではデータと呼ぶのは不適当なので「要素」としよう。そのような具体的でない、人によって解釈が異なる「要素」を利用する二次創作を指すのではないかと私は思う。

「要素」を具体的に言うと、キャラクターや世界観といったところだろうか。キャラクターの名前はデータにできるし、性別や血液型、キャラクターの絵(3Dアニメであれば3Dモデル)はデータにできるが、「キャラクターそのもの」はデータにはできない。そのキャラっぽい、そのキャラっぽくないというのは、人によって解釈が異なる。つまり、そのキャラクターをそのキャラクターたらしめる「何か」は、ほとんどデータ化できないのだ。世界観についても同じ事が言える。

実際に同人活動なる二次創作を覗いてみても、リミックスで挙げたような具体的データを利用した二次創作はほとんどない(原作のストーリーを完全コピーした同人誌はほとんどない。多くはストーリーで言及されなかった余白に新しいストーリーを作っている)。二次利用しているのはキャラクター、世界観、そしてストーリーの余白である。

リミックスと同人活動が区別される場合、「要素」の二次利用は、「要素」の解釈という作業の結果が人によって異なるという理由で、「データ」の二次利用とは区別すべき「創造的作業」とみなされているのではないだろうか。対して「データ」の二次利用はおそらく「コピー」と呼ばれるのだろう。

そのようにみなす場合、同じ二次創作であるにもかかわらず、リミックスは一部創造的であり、同人は全部創造的であると考えられる。少し奇妙な話だが。

 

この奇妙な区分けは、日本の漫画アニメ等創作物のビジネスモデルが、時代に合わせて進化できていない事に起因するのではないかと思う。

海外では創作物そのものではなく、創作物の周辺でお金を儲けるビジネスモデルがかなり発展している(例:音楽のデータではなくライブやグッズで儲ける)。そのためデータのコピーは、リミックス目的だろうがそうでなかろうが、アーティストにとって敵ではなく、広告なのだ。だからデータコピーと二次創作の距離は近い。

一方で日本の漫画やアニメは、いまだにデータを売るビジネスモデルからあまり先に進めていない。これがデータコピーと二次創作を遠ざけようとする原因ではないだろうか。

ビジネスモデルを先に進めることができれば、「作品のコピーは認めず二次創作を黙認する、日本のいわゆる同人文化」がクリエイターに配慮する必要も無くなり、同人はリミックスを取り込みさらに進化するだろう。

(けものフレンズの場合ならば、背景だけでもデータを公開すれば、同人ゲーム、同人アニメ、同人漫画の動きはもっと活発になるのではないだろうか。)

 

(追記)

サンプリングのクリアランスにおいて同じようなものを見つけることができた。

サンプリングとは、hiphopのDJプレイで、誰かが作った他の曲の一部分を抜き出してループさせるというものである。ラップの後ろで流れていることが多い。

具体例を挙げよう。

www.youtube.com

これは、日本語ラップ史における最重要曲の一つ、Buddha Brandのfunky methodistである。

このラップの後ろで流れている音がループしているのは分かると思う。この音は、

www.youtube.com

この曲から抜き出して(引用して)ループさせている。もちろんここからだけでなく、パーカッションなどを他の色んな音源から引用してコラージュのようにビートを作っている。これがサンプリングだ。

(ちなみにSteve Khanのこの曲は、下の曲のカバーである)

www.youtube.com

 

さて、

このサンプリングをするためには、他人の曲を引用するという事で許可を取る必要があるのだ。これがクリアランスである。

このクリアランスにおいて、引用した曲の一部をそのままのデータで用いる「通常のサンプリング」と、一部の楽譜のみを引用して自分たちで演奏したものを用いる「打ち込みのサンプリング」では手続きが異なるというのを見つけた。

 

サンプル・クリアランスは、原曲のソースをそのまま使用する場合と、新たに演奏して使用する場合で少し違ってくる。2010年に当サイトにて掲載した外部ライターのコラムから、一部を引用させていただく。

「サンプリングには、大きく分けると原曲の音源(=原盤)をそのまま使用した場合とそうでない場合の2つの方法があります。例えば、かの有名なDiddy(ディディ)の『I’ll Be Missing You』は、Police(ポリス)の『Every Breathe You Take』のリフレーン・メロディを借用して新たに録音しています。このようなケースでは、ポリスの原盤を所有しているレコード会社から許諾を受ける必要はなく、音楽出版社を通じて作詞者と作曲者(以下、原著作者)の許諾を受ければ使用することができます。原著作者が出版社と契約を結んでいない場合、原著作者本人から直接許諾を受けることになります。もうひとつはShyne(シャイン)の『Quasi O.G.』のようなケースです。この曲ではイントロでBob Marleyボブ・マーリー)の『No More Trouble』の原曲がそのまま使われています。このようなケースでは、出版社を通じて原著作者の許可を受けなければならないのはもちろん、ボブ・マーリーの原盤を所有しているレコード会社からも許可を受けなければなりません

 

下記リンクから引用

bloomint-music.com

 

つまり、原曲のデータをそのまま用いた場合は作曲者だけでなくレコード会社からも許可を得る必要がある一方、そのまま用いない場合(自分で録音した場合)は許可を得るのは作曲者だけでよく、レコード会社からは得る必要が無いのだ。

(この影響で昔ながらの純粋なサンプリングアーティストが減っていることが個人的に残念である)

これは、リミックスと同人の違いの話ととてもよく似ている。というか全く同じ問題である。

「リミックスと同人の違い」というのはもっと根が深い話であったようだ。その本質へは、「打ち込みとサンプリングの違い」を通じて迫ることができるだろう。サンプリングをめぐっては既に多くの裁判が行われてきたし、長い間世界中で議論されてきたからだ。

 

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