チンパンジー言語訓練ブログ

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「みんなのもの」、けものフレンズ ~CGM、UGCへの転換点~

日経トレンディネットで、『「けものフレンズ」仕掛け人が語ったヒットの理由』という記事が掲載された。

trendy.nikkeibp.co.jp

他にも似たようなインタビュー記事はいくつか見たのだが、このインタビューが最も分かりやすく、建設的な内容だと私は思う。さすがは日経といったところか。

インタビューを受けているのは、KADOKAWAの梶井斉氏である。

梶井斉氏は「2次創作がコンテンツの寿命を延ばす」という、(KADOKAWAと経営統合している)ドワンゴの会長、川上量生氏の考えを確実に踏襲し、実行している。けものフレンズの成功は、KADOKAWAドワンゴが二人三脚で勝ち取ったものだ。

その点については、この記事だけでは強調されきっていないと感じたため、私が改めて強調しなおしたいと思う。トレンディネットの記事を読んで、単に作品を真面目に作ったからヒットしたと読んでしまう人が出てきてしまうかもしれない。そうではないのだ。真面目に作った目的、真面目の方向性こそが重要なのである。

(私のこの記事は、『「けものフレンズ」仕掛け人が語ったヒットの理由』を読んでいただいたという前提で話を進めます。おもしろいインタビューです。この先読み進める前に読んでみてください。長くないのですぐ読めると思います。)

 

(以下引用、1ページから)

 

――単刀直入に聞きます。これだけ多くの方が熱狂するコンテンツになった理由をどのように分析されてますでしょうか。

 

 KADOKAWAの梶井斉氏(以下、梶井):真面目に作ったからだと思います。ありきたりな答えですが、“ヒットを仕掛ける”場合、たいていは「こうすれば話題になるだろう」といったマーケティングに基づいた施策や奇をてらったプロモーションを考えがちです。

 

 しかし、お膳立てしたものではなく、自主的に参加してもらえる題材を提供しなければいけません。それがプロジェクトの原点である動物に対して真摯に取り組んで作品を作ることだったんです。(以下著者により省略)

 

(以上引用)

 

さて。

ここで、この記事で最も重要な言葉がさらりと流されている。梶井氏の「参加」という言葉だ。つまり、梶井氏にとって、「多くの方が熱狂するコンテンツ」とはすなわち、「多くの方に参加してもらえるコンテンツ」なのである。梶井氏にとってあまりに至極当然なことであるため強調されていないものと思われる。

けものフレンズが成功した最大の要因は、この「参加」なのだ。ここで言う参加とは、ニコニコ動画のコメント、ニコニコ静画ツイッター、pixiv、二次創作、考察、その他様々のことである。

現代のヒット作品というものは、製作者だけで完成させるものではない。視聴者の参加によって初めて完成するものなのだ。それを認識・計画・実行し、その戦略を史上最も上手くハマらせた。これが、けものフレンズが日本アニメ史の転換点である理由である。

(なにげなく「話題にしてもらう」と「参加してもらう」を不可分なものにしているのも、実はかなり重要なポイントである。)

梶井氏には、「いかにヒットさせるか」を考える時、自動的に「いかに参加してもらうか」を探ろうとするマインドがあるように見える。この記事では強調されきっていないが、けものフレンズの成功を語る際、それこそが最も重要なことなのだ。

つまりこのインタビューは、「ヒットさせるためにどうしたのか?」ではなく、「参加してもらうためにどうしたのか?」について質問、回答されているものなのである。そこを分かっていなければ、この記事の核を読み取ることは絶対にできない。

したがってあなたは、「けものフレンズはいかにして視聴者の参加を促したのか?」、「視聴者に参加してもらえる作品とは一体どのようなものか?」という疑問を持って、もう一度日経トレンディネットの記事を読み直さなければならない(お手数をおかけします)。

 

….読んでいただけただろうか。

 

ではついでに、この「参加」について少し掘り下げることにする。

消費者によって完成されるコンテンツは、UGC/User Generated Content(ユーザーによって作られるコンテンツ)と呼ばれている。また、UGCを発信する媒体は、CGM/Consumer Generated Media(消費者によって作られるメディア)と呼ばれる。

Consumer Generated Media - Wikipedia

Youtubeニコニコ動画ニコニコ静画ツイッター、pixiv、クックパッドなどはCGM、それらのメディアで発信されたコメント、二次創作などはUGCにあたる。

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しかし、「けものフレンズ」という作品そのものがCGMUGCのどちらに当てはまるかの判断は難しい。UGCを促進する機能、そして視聴者の「参加」=UGCによって無限に作品世界を広げていき完成されるという部分はCGM的だと言える。しかし「けものフレンズ」自体はコンテンツであってメディア、媒体ではない。

いや、UGCたちを集合させて互いにつなげたり、UGCを通じたコミュニケーションを促進するという点からしてメディアでもあるのだろうか…?

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私はけものフレンズのようなコンテンツを、個人的にCCC/Consumer Completed Content(消費者によって補完されるコンテンツ)とでも呼ぼうかと思う。Cが三つ並んでかっこいい。

(CEC/Consumer Expanded Content[消費者によって拡張されるコンテンツ]とどちらにするか迷ったが、インパクト重視でCCCにした。)

 

けものフレンズはアニメ作品を改めてCCCとして捉えなおし、CCCとして機能するために綿密に設計されていた。そして、見事CCCとして作動したのである。

アニメでここまで成功したCCCは今まで無かっただろう(ゲームでは東方projectが既に成功している)。けものフレンズは間違いなく日本アニメ史の転換点である。

私は東方projectについてあまり詳しくないのだが、とても息の長いコンテンツであるというのは知っている。また、同人誌、同人ゲームなどの二次創作が最も盛んなコンテンツの一つであるというのも一応分かる。上手くいけば、けものフレンズ東方projectに肩を並べるような巨大コンテンツに成長するだろう。

 

KADOKAWAは、ドワンゴとの連携によってけものフレンズの成功を勝ち取ったのは疑いようの無い事実である。ドワンゴの思想、技術、潜在能力にKADOKAWAがようやく追いつき、連携を最大限に活かし始めたのだ。けものフレンズで味をしめたKADOKAWAは、CCCを次々に投入するだろう。となると、日本アニメはしばらくKADOKAWAドワンゴ一強状態が続くのではないだろうか。

 

(以下に、この記事に関連する私の記事を挙げます。読めばより深く理解していただけると思います。)

・すごく関連している2記事

想像/創造の余地について② ~けものフレンズが残した「余白と土壌」

けものフレンズたつき監督の「考察マーケティング」の巧さ ~100人中1人に気付かれるコントロール~

 

・そこそこ関係している記事

けものフレンズの二次創作ガイドラインについて① ~はじめに~

けものフレンズを影から支えた「海賊」(上) ~バイラルマーケティングの証明~

 

(このブログは私の言語訓練に用いられます)