チンパンジー言語訓練ブログ

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情報はフリーになりたがる一方で、高価になりたがる①

(この記事の内容については、クリス・アンダーソン氏著「フリー」第6章を読めばより深く理解できると思います)

 

「情報はフリーになりたがる(Information wants to be free)」

この言葉はスチュアート・ブランド氏の言葉であり、オープンソースの精神を端的に表している。

言われてみれば確かに当然のように感じる。情報=データは、ほとんどゼロコストで複製できるし、それを記憶するコストや、それを通信するコストすら今現在どんどん下がっている。無限にコピーできるものがコモディティ化(ありきたりになって価値が下がる)するのは当然である。

しかし、この言葉は情報として受け継がる中で編集されている。ブランド氏が言った言葉は実は以下のようなものだった。

「一方で、情報は高価になりたがる。なぜなら貴重だからだ。正しいところに正しい情報があれば、私たちの人生さえ変わりうるのだ。他方で、情報はフリーになりたがる。なぜなら情報を引き出すコストは下がりつづけているからだ。今はこのふたつの流れがせめぎ合っているのだ。」

言葉の前半の部分が切り取られている。「情報は高価になりたがる」という部分だ。

このせめぎ合いは今でも続いている。人々は中国やアメリカのサイトで海賊版の漫画を読む一方で、応援する漫画家の漫画は、海賊版を読まずに単行本を買って読んだりもする。

 

つまり重要なのは、フリーになりたがる情報もあれば、高価になりたがる情報もあるということだ。

 

ここで例を一つ挙げよう。(あまりいい例ではないかもしれないが、新しい話題なのでこれを使うことにした)

 

grapee.jp

 

ある絵描きさんが図々しい人に絵をタダで描くように頼まれ、きっぱりと断る…という内容である。

この事例は、「情報はフリーになりたがる」という言葉だけで考えると、不可解に見える。

絵も情報であると言えるし、その絵をスキャンして画像データにすれば無限にコピーできる。それをネットで拡散させるのは容易だし、そうなればそのデータに金銭的価値はなくなる。この絵描きさんが描く「絵」というデータは、フリーになるための条件を満たしていると言えるだろう。

(一応言っておくが、絵描きさんにタダで絵を描くように言った人は、「情報がフリーになりたがる」からそう言ったのではないと思う。おそらく単に図々しいだけだ。そのためこの例はあまり適当ではないのかもしれない。)

しかし、この絵はフリーにはならなかった。なぜなのか?絵描きさんがいじわるしたのか?それとも絵描きさんが既得権益を守ろうとしたのか?いや、違う。

 

絵がフリーにならなかったのは、「情報はフリーになりたがる」一方で、「情報は高価になりたがる」からだ。

ではなぜ、絵というデータは高価になりたがったのだろうか?

絵描きさんの腕がよかったから?それもある。が、本質的な理由ではない。

高価になった本質的理由は、そのデータが希少だったからである。

 

「無限にコピーできる」データが「希少」というのは一見矛盾しているように見えるが、この例を見れば、絵描きさんが描いた絵というデータは確かに希少だ。

さあ、「希少なデータ」とは一体どんなものなのか、ここまで読んだあなたは察しがついただろう。

「希少なデータ」とは、まだこの世に存在していないデータである。ものすご~く大雑把に言うと、ググっても出てこないデータである。

クリス・アンダーソン氏は希少なデータを「カスタマイズされた情報(その人だけに与えられる特別なもの)」と表現した。反対に希少ではないデータを「潤沢な情報」、「コモディティ化した情報(みんなが同じものを得られる)」とした。

これは、オーダーメイドで作った服は高いが、既製品は安いのと同じである。

 

さて、話を整理しよう。

フリーになりたがる情報もあれば、高価になりたがる情報もある…のだが、詳しく言うと、

「潤沢な情報はフリーになりたがり、希少な情報は高価になりたがる」のである。

そして「希少な情報」とは、「まだこの世に存在していない情報」である。

 

「人々は中国やアメリカのサイトで海賊版の漫画を読む一方で、応援する漫画家の漫画は、海賊版を読まずに単行本を買って読んだりもする。」という現象はなぜ起こるのかもこれで説明できる。

漫画を買う人々は、既にこの世に存在する「その漫画」を買っているのではなく、まだこの世に存在していない「その漫画の続き」を買っているのである。その漫画家が続きを執筆するのを、単行本を通じて応援、支援しているのである。(もちろんそれが全てではないが、それなりに大きいと思う。)

 

データを扱うビジネス、特に最近海賊版に苦しめられている音楽、漫画、アニメ業界は、フリーになりたがる一方で高価になりたがるというデータの二面性を上手く利用しなければ生き残れないだろう。

つまり、「フリーになりたがる潤沢な情報」で商売をするのはもはや不可能であるため、「高価になりたがる希少な情報で」商売をしなくてはならないのだ。

 

②では、情報を扱うビジネスはどう進化すればいいのかを考えていく。

 

(情報はフリーになりたがる一方で、高価になりたがる② に続きます)